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未経験から経理を目指すためのアプローチ|経理に向いている人・不向きな人の特性について解説

更新日 2023/05/25

経理部は事務職の中でも人気のある職種です。未経験で経理へのキャリアチェンジを考えている方は、自身が経理職に適しているかどうか気になるかもしれません。そこで、この記事では経理職に向いている人の特徴と未経験から経理を目指すための方法を紹介します。経験はないけれど、経理領域への転職を考えているなら、ぜひこの情報を参考にしてみてください。

経理の主要な業務

経理の主要な業務は以下の通りとなっています。

  • 現預金管理
  • 伝票記帳
  • 集計・書類作成
  • 給与関連業務
  • 税金関連業務

経理の仕事は広範で、未経験者には難易度が高いと感じるかもしれません。ですが、実際には経験がなくても始められる業務もあります。大企業では、経理の業務が細分化されており、各人に特定の経理業務が割り当てられることが多いため、全範囲にわたる知識を即座に必要とするわけではありません。数ヶ月の研修を受ければ、未経験でも経理として働くことが可能となります。

また、経理部と財務部は両方とも金融関連の部署ですが、その役割は異なります。経理部はお金の流れを管理し、一方、財務部は資金調達、予算管理、資金運用等を担当します。これから、経理の具体的な業務内容について詳しく説明します。

現預金管理

現預金管理は、現金の出入金と銀行口座の管理を行う業務で、これらは会社運営に不可欠な資源となります。取引の詳細や残高を把握していないと、支払い遅延や横領、着服などのリスクが生じる可能性があるため、その重要性は非常に高いです。

現金管理の職務内容
  • 鍵のかかった金庫で現金を保管
  • 金庫からの現金の動きを現金出納帳や会計システムに記録・管理
  • 一日の終わりに現金残高と現金出納帳や会計システムの記録が一致するか確認
  • 社内規定に基づいて金庫内の現金量を補充し、一定以上の現金は銀行に預金
預金管理の職務内容
  • 通帳と印鑑を鍵付きの金庫で保管
  • 銀行口座の残高や出入金をチェック
  • 会計システム上の残高と実際の預金残高が一致しているか確認

伝票記帳

伝票記帳とは、企業間の取引内容を記録することです。経理における帳簿には、取引を時系列順に記録する「仕訳帳」と、勘定科目別に分類した「総勘定元帳」があります。仕訳帳のみを使用する場合、取引が発生した順番に一行ずつ記録し、その後で総勘定元帳にまとめる必要があります。このため、取引ごとに複数の人が記録を分担するのは困難です。

しかし、伝票を使用すれば、取引ごとに記帳し、その後で総勘定元帳にまとめることができます。このようにすることで、取引担当者ごとに業務を分担することができます。経理業務を効率的に進める上で、伝票記帳は重要な手法と言えます。

伝票には、入金伝票、出金伝票、振替伝票、仕入れ伝票、売上伝票などがあります。これらの伝票をもとに、領収書や請求書などの取引証明書類を参考にして記帳作業を行います。

集計・書類作成

経理では、月次決算を毎月、年次決算を1年ごとに実施します。月次決算は、自社の事業の動向や損益を把握するために作成され、経営方針の見直しに役立ちます。毎月の経営会議で経営方針を決める場合、月次決算は重要な資料となるでしょう。

また、年次決算では全ての処理を一括して行うと大変なため、月ごとに調整を行い、年次決算の負担を軽減することもあります。年次決算は納税額の決定に関与するだけでなく、財政状況を基に次年度の資金繰りや経営方針を検討するために必要です。

決算の流れと必要書類

月次決算の流れ
  • 勘定の整理:現預金の照合・売上の計上・未払金の整理・棚卸しなど
  • 決算書の作成:一般的には賃借対照表と損益計算書を作成することが多く、必要に応じて予算実績管理表や月次損益推移表などを作成
月次決算に必要な書類
  • 残高試算表
  • 総勘定元帳
  • 補助残高一覧表
  • 資金繰り表
  • 台帳
年次決算の流れ
  1. 勘定の整理:現預金の照合・売上原価の算出と売上の計上・売掛金や貸付金等の確認など
  2. 決算書の作成:賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書・株主資本等変動計算書などを作成
  3. 税金の計算:法人税・法人事業税・法人住民税・消費税などを計算
  4. 書類の準備:法人税申告書や消費税申告書など、法人税・消費税に関連する書類を準備


年次決算に必要な書類
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 内訳書
  • 法人事業概況説明書

給与処理業務

給与処理は、社員の毎月の賃金を計算し、それを支払う業務です。基本賃金に残業代や必要な手当を加えて総支払額を算出し、それから所得税、社会保険料、住民税、雇用保険料を控除した額が社員への支払い額となります。控除された税金や保険料は、国や自治体に適切に納税しなければならず、精確な計算が必須です。 給料は労働の対価として極めて重要であり、労働基準法第24条により月に最低一回、定期的に支払いが求められています。適正な賃金を支払うことは、主要な業務の一つとなっています。

税務処理業務

税務に関連する業務では、企業が支払うべき法人税や消費税を計算し、納税します。通常、財務会計のルールに従って財務報告書を作成した上で、法人税法に基づいた項目の調整を行い、最終的な課税利益を算出します。 企業は、決算後に税務申告書と決算書を作成し、正確に納税する責任があります。毎年の税制改革に対しても、速やかに情報を取得し、柔軟に対応することが求められます。このため、専門的な知識を持つ会計担当者の存在は不可欠です。

経理業務のスケジュール

経理業務では、日々のタスクの他に、月や年ごとに特定のタイミングで行わなければならないタスクが存在します。給与支払いや財務報告書の作成など、期限が定められているタスクについては、遅延や欠落がないように、丁寧な準備が必要です。事前にタスクの計画を策定しておかないと、何を行うべきかが不明確になり、期限内に完了しないリスクが高まるため、細心の注意が求められます。

それでは、1日、1ヶ月、1年ごとの経理業務のスケジュール例を見ていきましょう。

1日のスケジュール

1日のスケジュール(閑散期)
9:00 出社
10:00 小口現金を準備
11:00 仮払金・経費精算などの処理
12:00 昼休憩
13:00 入出金確認
14:00 伝票の作成・データ入力
15:00 現金残高の照合
16:00 メールチェック・ファイリング


1日のスケジュール(決算の近い繁忙期)
9:00 出社
10:00 小口現金を準備
11:00 仮払金・経費精算などの処理
12:00 昼休憩
13:00 決算書類作成
16:00 伝票の作成・データ入力
17:00 現預金の入出金を確認


1ヶ月のスケジュール

1ヶ月のスケジュール
1日 売上代金の請求と回収の管理業務・在庫の確認・実地棚卸
5日 月次決算
10日 住民税や源泉徴収税の納付
20日 給与の算出と支払い準備・社会保険料の算出・仕入代金の支払い
25日 月次決算
末日 伝票類の取りまとめ・社会保険料の納付


1年のスケジュール

1年のスケジュール
4月 決算整理・財務諸表作成
5月 決算書類作成・株主総会の準備
6月 株主総会の開催・税務申告
7月 賞与計算と振込み・支払届の提出・労働保険の年度更新・社会保険料算定基礎届の提出
11月 中間税務申告
12月 年末調整・賞与計算と振込み・支払届の提出
1月 法定調書と給与支払報告書の提出・支払調書の作成と提出
3月 実地棚卸・年次決算準備


経理の仕事が向いている人の特徴

経理業務には向き・不向きがあります。一般的に、経理業務に適した特徴は以下が挙げられます。

経理に向いている人
  • 作業を丁寧かつ正確に進められる人
  • 事前に計画を練り、それに従ってタスクを遂行できる人
  • 強い責任感を持つ人
  • 数字や計算に対する苦手意識がない人
  • 他人とのコミュニケーションを楽しめる人
  • チームワークを大切にする人
経理業務では、精度、責任感、そして人間関係に関するスキルが特に重要視されます。各項目を細かく見て、あなた自身が経理業務に適しているかどうかを見極めてみてください。

作業を丁寧かつ正確に進められる人

経理業務では、精度が非常に重要となります。台帳の記録と実際の資金の動きが一致しない場合、一つひとつの記録を再確認しなければなりません。経理は給与支払いや税金納付など、企業の運営を支える重要な業務を担当しているため、誤りの許されない仕事と言えます。

日常業務を正確で注意深い方法で行うことで、記録と現実の金融取引の間に矛盾が生じることはありません。ミスが少なく高品質な作業が可能な人こそ、経理に向いていると言えます。

事前に計画を練り、それに従ってタスクを遂行できる人

経理では、日々の資金管理だけでなく、月単位や年単位で実施する作業も多々存在します。税金や給与の計算・支払い、財務諸表の作成など、期限が設けられた作業が多くあり、しっかりと計画を練り、それに基づいて作業を進める能力も重要です。

計画的に物事を進めないと、期限内に作業が終わらない可能性があり、それが大きな誤りにつながる可能性があります。将来的な視野を持ち、目標を達成するために何をすべきかを検討できる人でなければ、経理業務は難易度が高いかもしれません。

強い責任感を持つ人

経理は、企業の財務を管理する重要な部署であり、その業務は誤りを許さないものです。他の人に依存せず、業務をきちんと完結させることができる人が求められます。もし不完全な状態で仕事を放置する人だと、経理の業務は円滑に運行することが困難になるでしょう。

特に中小企業では、経理の職務範囲は広く、資金管理も含まれることが多いため、その責任はさらに重大です。些細なミスでも他の部署やビジネスパートナーに影響を与えることを認識し、業務をスムーズに進行させるために何をすべきかを理解する人であれば、経理業務を責任持って続けられるでしょう。

数字や計算に対する苦手意識がない人

経理業務では、領収書の作成、給与の計算、財務諸表の作成など、日々多種多様な数字と向き合います。数値に対する不安感があると、会計ソフトやExcelなどでデータを入力する際にエラーが多発し、業務が円滑に進まない可能性があります。 数値に対する恐怖感がなく、スムーズにデータ入力が行える人は、エラーを最小限に抑え、業務をスムーズに進行させる能力があります。また、長時間数値と向き合うことで集中力が途切れないことも、経理職に向いている特質と言えるでしょう。

他人とのコミュニケーションを楽しめる人

経理は一見、計算やデータ入力の作業に専念しているように見えますが、実際には他の人との関わりも多いため、コミュニケーション能力が大切です。例えば、他の部門からの数値をまとめる際には、その部門の担当者との詳細なコミュニケーションが求められます。

また、取引先との請求内容の確認など、企業外の人々との交流も必要とされる場面も頻繁にあります。お金に関する業務だからこそ、スムーズなコミュニケーションを通じて相手の意図を理解し、高い精度の仕事を行うことが求められます。

チームワークを大切にする人

経理の仕事は、多くの場合、他の部門や外部のパートナーと連携しながら進められます。そのため、協調性とチームワークのスキルが非常に重要となります。一人で仕事を進めるのではなく、他の人々と協力しながらタスクを完遂することが求められます。

また、経理業務においては、時には他の部門からの要求や期限に対応しなければならない場合もあります。そのような状況で円滑に業務を進めるためには、他人と協力し、時には自分の意見を柔軟に調整する能力も重要です。これらの特性を持つ人は、経理の仕事に向いていると言えるでしょう。

経理業務に適さない人の特性

「経理業務が向いている人」の特性と反対の特性を持つ人は、経理業務に適さない可能性が高いです。経理業務に不向きな人の典型的な特性は以下の通りです。

経理に向いていない人
  • 大まかな性格を持つ人
  • スケジューリングが得意でない人
  • 責任感が薄い人
  • 数値や計算に対して避ける傾向がある人
  • 人との交流を避けたい人
  • オリジナル性や創造性を追求する職を望む人

経理業務に不適切な人がこの分野に進むと、日々の数値処理がストレスフルに感じるか、長時間のデスクワークが辛くなる可能性があります。仕事を楽しむためにも、自分の適性を正確に把握することが重要です。

経理の仕事を未経験から始めるには?

経理の仕事を未経験から始めるための方法はいくつかありますが、以下に主なステップをご紹介します。

未経験から経理業務に踏み出す方法
  • 自社内での異動を考える
    すでに会社に所属している場合、経理部門への異動を希望するという方法があります。その際には、経理に必要な基本的な知識を予め身につけておくことが推奨されます。
  • 経理関連の資格を取得する
    経理の仕事に役立つ資格(例えば簿記など)を取得することで、未経験者でも経理の専門的な知識と技術を証明することができます。資格は就職活動やスキルアップにも有利となります。
  • 経理に関連する勉強を始める
    経理の基本的な知識を習得するために、本を読んだりオンラインコースを利用したりすることもおすすめです。基本的な会計の知識や、Excelのスキルなどは非常に役立ちます。
これらのステップを踏むことで、未経験からでも経理の仕事を始めることができます。自分に合った方法を見つけて、スキルアップを目指してみてください。

経理未経験者向けの資格

資格名 概要 難易度
マイクロソフトオフィススペシャリスト マイクロソフトオフィスツールの操作スキルを証明する資格 合格率非公開 ※パソコン操作に慣れていれば難易度は低め
簿記検定3級 帳簿記入の方法や経理関連書類の読み方を始めとした、経理業務の基本的な実務ができることを証明する資格 合格率45.8% ※2022年6月12日実施回(参考:商工会議所の検定試験)
ビジネス会計検定3級 財務諸表を理解し、会計の目線から企業の実態を分析するための知識を備えていることを証明する資格 合格率63.5%


経理はなくてはならない重要な部門

経理は、企業の財務状況を管理し、維持するための重要な部門です。その仕事範囲は広く、精密さと注意深さを必要とし、数値に対する恐怖心がなく、優れたコミュニケーションスキルを持つ人々が経理職に適しています。

経理職が自分の性格やスキルと合わない場合、仕事の充実感が得られず、ストレスが溜まる可能性があるため、自分がこの仕事に適しているかどうかを慎重に考えることが重要です。また、経理職を目指す初心者の方は、資格取得をも視野に入れてることもおすすめです。